品質改善:なぜなぜ分析の良いところ悪いところを考えてみる

なぜなぜ分析とは?

大阪・兵庫が地盤で、品質管理・生産性向上等の「工場経営改善」を得意とするコンサルト、 薄木栄治 です。

さて、前回のブログでは、「品質不具合原因究明における失敗事例」について述べましたが、今回は、実際の原因究明の基本である「なぜなぜ分析」の特性について記載したいと思います。

まず、「なぜなぜ分析」をWikipediaで調べてみると、

『ある問題とその問題に対する対策に関して、その問題を引き起こした要因『なぜ』を提示し、さらにその要因を引き起こした要因『なぜ』を提示することを繰り返すことにより、その問題への対策の効果を検証する手段である。 トヨタ生産方式を構成する代表的な手段の一つである。』と書かれています。

なぜなぜ分析の詳しい実施方法は専門書に譲るとして、簡単に説明すると、生じた不具合に対してなぜ生じたのかということを3~5回繰り返すと本当の原因が顕れてくるという原因究明手法です。 品質不具合が生じた時、誰でも「なぜこんな不具合が発生したのか」と考えますが、これをもっと突き詰めて深く実施するのが「なぜなぜ分析」と言えます。

「なぜなぜ分析」は非常に優れた原因究明の手法ではありますが・・・

上記に示すように、「なぜなぜ分析」は、「なぜ」を繰り返すという単純な原理原則に則ったものであるだけに非常に優れた手法であり、私も必ず、原因を究明する時には「なぜ、なぜ」と何度も頭の中で唱えています。 しかし、この手法はそれなりの経験と技術が必要であり、熟練者が実施すると非常に効果的なものとなりますが、初心者が実施すると全く真の原因とはかけ離れた結論を導くことがありますので充分な配慮が必要となります。

ここで、皆さんの会社でも起こりえるような一例を示します。 例えば、「転記ミスを起こした」という不具合の原因究明の実施事例について、Aさんの物語として記載してみます。

ある時「転記ミスを起こした」という不具合の原因究明を指示されたAさんは、「なぜなぜ分析」を使って原因究明に臨みました。 まず、転記ミスを起こした本人(Bさん)へのヒヤリングからです。 Bさんは、常にチェックをしながら転記をしているという自負がありますので「自分は転記ミスなど起こさない。 今回のミスは、単なるヒューマンエラーだ」と回答しました。

Aさんも普段のBさんを良く知っているので、なるほどその通りと思い、

なぜ「転記ミスを起こした」 ⇒ 理由「ヒューマンエラーを起こした」

と、ひとつ目の「なぜ」の解明が完了しました。

更に、Aさんは、最低でも「なぜ」を3回繰り返すように言われていましたので、次の「なぜ」を考えるために、再度Bさんにヒヤリングを行いました。

「なぜヒューマンエラーを起こしたのでしょうか」との問いに、Bさんから「その時は忙しかったからなあ・・・ それに月末で仕事が集中していたからなあ・・・」と回答を得ました。

「なるほど、なるほど、その通りですね」と同意し、

なぜ 「転記ミスを起こした」に対して

⇒ 理由「ヒューマンエラーを起こした」
⇒ 理由「その時忙しかった」
⇒ 理由「月末で仕事が集中した」

と整理しました。

これにより、Aさんは「転記ミスを起こした」真の原因は「月末で仕事が集中した」と結論付け、「なぜなぜ分析」は完了です。

さて、皆さんは、Aさんの「なぜなぜ分析」の結果をどのように捉えられるでしょうか・・・

最初の「なぜ」は非常に重要

その後の経過です。

Aさんは「なぜなぜ分析」ができたと喜び勇んで、上司に「転記ミスを起こした原因は、月末で仕事が集中したからで、その対策として、仕事の平準化を実施します」と報告しました。 これに対して、上司からは「月末に仕事が集中するのは当たり前、それぐらいで転記ミスを起こすはずはないだろう。 再度原因究明をやり直すように」と叱責されました。 という経過です。

さて、どこでAさんは上司から叱責されるようなミスを犯したのでしょう。

その要因は大きく下記の3点と考えます。

①「ヒューマンエラー」は最後の「なぜ」であり、最初の「なぜ」とすることはできない。
②「その時忙しかった」は「ヒューマンエラー」の原因ではない。
③「忙しい」という原因は安易な結論付けである。

まず、①の要因から考えてみましょう。 なぜ「ヒューマンエラー」は最後の「なぜ」にしかならないのでしょうか?

「ヒューマンエラー」の原因を深く考察してみると「人間の集中力は長く続かないから」などと「医学的・心理学的考察」によって結論付けすべき性質であるように思えます。 つまり、現場の第一線で「エラーという偶然の事象」に対して原因を見つけることは不可能であるということです。 結局「ヒューマンエラー」を原因とした場合には、更にその原因を追及しても仕方がなく、「ヒューマンエラーの確率を低くする方法」や「ヒューマンエラーを前提に流出防止対策を考える」というように考えを切り替えるべきなのです。

このように、最初の「なぜ」は原因究明のキッカケとなるもので非常に重要であり、「ヒューマンエラー」のようにその先の原因を考えても仕方のない事象を持ってこないで、「照明が暗い」「文字が読みにくい」などもう少し具体的なものを持ってくる必要があるということです。

「忙しい」という原因について

次に、②の要因を考えます。 これについては、上記に示したように「ヒューマンエラー」は最後の「なぜ」であるということが一つありますが、逆に、「忙しければヒューマンエラーは起こるのか」と問うと不適切であることが解ります。 忙しければ、意識が集中するのでヒューマンエラーは減少するかもしれないし、逆に、暇になると注意が散漫となりヒューマンエラーが増加するかもしれません。 このように「忙しさ」と「ヒューマンエラー」は全く関係がないことが解ります。

また、③のように、品質不具合の原因を「忙しい」と結論付けることを時々見かけますが、「忙しい」はどのような不具合に対しても原因とすることができる安易な逃げです。 「忙しい」は非常に範囲も広く、漠然としており、ここから有効な対策を考えることはできません。 やはり、具体的な対策が取れる原因を見つける工夫をすることが重要です。

過去の経緯を調べることも重要

もうひとつ、「なぜなぜ分析」では、過去の経緯を良く調べることが重要と言われています。 その品質不具合を起こす前に実施してきた様々な事象の中に、品質不具合が発生する原因が隠れているわけです。 今までのブログで何度も述べてきた通り、品質不具合は、過去の不具合の繰り返しがほとんどであることから、特に、過去の不具合に対しての対策の実施状況については、「その対策が有効であったのか」 「遵守されてきたのか」など確実にチェックすることが重要です。

但し、この過去の経緯を調べ始めるとキリがなく、まじめにやればやるほど些細なことについても経緯を調べたくなります。 以前に私が実施した「なぜなぜ分析」では、様々な要因を深く考えていこうとすると、過去に遡って調べたいことが山と出てきて、一件の不具合に対して3ヵ月もかかったことがありました。 忙しい企業様ではここまで時間をかけるわけにもいけませんので、ある程度のところで切り上げるなど、効率的に過去の経緯の調査を実施する必要があります。

まとめ

上記の通り、「なぜなぜ分析」は、原因究明において非常に有効な手法であり、私も大いに活用しています。 しかしながら、正しく運用しなければ間違えた原因を提示することにもなりかねず、また、まじめにやりすぎると過去の経緯の遡りなど工数ばかりかかるという欠点もあり、それなりの経験と技術が必要です。 このような特性を充分に認識した上で「なぜなぜ分析」に取組んで頂ければ、皆様の品質不具合の原因究明のレベルアップは確実であると確信しています。

一方、「なぜなぜ分析は難しいな」と思われた方は、私なりに考えた「修正なぜなぜ分析」について次回のブログで紹介したいと思いますので引き続きお付き合いをお願い致します。

今回はここまで、次回は、上記の通り「修正なぜなぜ分析」について記載いたします。

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