品質改善はなぜうまくいかないのか?

品質第一と言うけれど!

大阪・兵庫が地盤で、品質管理・生産性向上等の「工場経営改善」を得意とするコンサルタント、 薄木栄治 です。

さて、前回のブログでは、品質不具合を削減するには、品質意識、過去の不具合の真因対策、そしてその対策を組織的に実行することと記載しましたが、それぞれ順番にその方策を詳しく記載していきます。 その前に、品質不具合対策を充分に実施しているけれども一向に品質不具合が減らない企業様も多いと思います。 なぜ、減らないのかをまず最初に考えていきたいと思います。

一般的に企業の経営者様で品質を重視されない方はおられないと思います。 企業理念としても「品質第一」を掲げられ、品質改善に熱心に取り組まれている企業様も多いと思います。 それにも関わらず品質不具合が多発するのはなぜでしょう?

 

「納期第一」「コスト第一」ではないか?

さて、本当に経営者様は「品質第一」を考え、実践されているでしょうか? 例えば、出荷直前に検査で不合格となりましたが、手直しをすると1週間の納期遅れが生じるし、お客様に渡っても問題になるような不具合であるとも思えない場合、経営者様はどのように対処されるでしょうか? そのまま出荷しても、問題が生じることはまれであり「そのまま出荷しよう」と判断される経営者様が多いと思います。 しかし、これを見た従業員は、このような経営者様に対して、口では「品質第一」と言うけれども、本心は「納期第一」「コスト第一」であるのだと解釈してしまいます。 そしてこのような従業員は、次に同程度の不合格の案件が生じた時には、経営者様に相談することなく、不合格を合格とし、出荷することになります。 更に、その合格とする基準はどんどん甘くなっていき、当初経営者様が判断した時は、根拠があって出荷OKとしていたものが、根拠なしに検査不合格品を出荷していくことになり、ついには大クレームとなって経営に大きな影響を与えてしまいます。

常に、従業員は経営者様を見ています。 「品質第一」は口先だけということを簡単に見抜いてしまします。 経営者様が本気で「品質第一」を実践することが最も重要であることをしっかりと認識しておくべきです。

そうそう、よく不祥事を起こした会社の経営者が謝罪会見で、具体的な方策も説明せず「今後万全の対策を実施してまいります」と言われるのを見かけますが、私は、この経営者は謝罪会見が終わると「やれやれこれで終わったと舌を出しているな」と思って見ています。 本当に大変なのは、万全の対策を実行することなのですが・・・

品質第一は本当?

品質担当者は企業内で評価されているか?

もうひとつは「品質担当者は企業内で評価されているか?」という点です。 例えば、役員の中に「品質管理出身者」がいるでしょうか? 一般的に、中規模以上の会社では品質担当役員(CQO)がおられます。 しかし、多くの品質担当役員は、製造部門出身の方で品質管理部門の方は少数です。 これは、品質管理という業務が守りの業務であり、品質不具合は「0」で当たり前、品質不具合を出すと「減点」という、絶対にプラス評価がされない業務だからです。 「品質第一」といっても品質管理部門の人が役員になれないようでは、やはり「品質第一」は口だけということになるのではないでしょうか。

また、役員とまでは言わず、検査員は評価されているでしょうか? 例えば、いつも神経をすり減らし、品質不具合を外部に出さないようにと黙々と仕事をしている検査員にありがとうという言葉をかけているでしょうか? 私も、時々検査員の仕事をみることがありますが、神経を張り詰め、不具合のチェックをされている姿をみると本当に尊敬してしまいます。 このような検査員のおかげで品質が維持されていることをどれだけの経営者様が理解しているでしょうか? このような検査員の横を通る時「いつもありがとう」と声をかけるだけでいいのです。 このような小さな積み重ねが「品質第一」を実現していくのです。

 

「品質第一」チェックリスト

さて、実際の例として、役員や検査員のことを記載しましたが、皆さんの会社の「品質第一」はどのくらいのものでしょうか? 下記にチェックリストを作ってみました。 1問10点満点で、合計100点満点です。 自己採点で結構ですが、70点以上取れたでしょうか? 70点以上あれば「品質第一」と言っていい、50点以下であれば全くダメという評価です。 ぜひともこの点数をあげるような活動を実施して頂きますようお願い致します。

1.経営トップは、品質向上におおいに関心がある。
2.経営トップは、品質改善を行うと褒めてくれる。
3.経営トップに、品質管理の経験者がいる。
4.品質方針があり、社員全体で実行されている。
5.検査で仕様を満たさない項目があれば出荷をストップする。
6.お客様の視点で常に考えている。
7.品質不具合に対して、深く原因を追究する。
8.品質不具合対策は、実施状況のチェックを行っている。
9.品質不具合、作業ミスが生じた場合、正直に報告する。
10.決められたルールは、厳格に守る組織の体質がある。

 

「品質第一」を実践された事例

最後に、品質第一を実践された例を一つ紹介いたします。 下記は、昨年(2020年)10月にサムスンの会長である李健熙氏が亡くなられたときに紹介されていたCNET Japanの記事の一部です。

「李健熙氏は1995年、自身が贈り物として渡した携帯電話がうまく動作しなかったことが分かり、激怒したという。 同氏は、サムスンのメインの組立工場があった韓国亀尾市に赴き、携帯電話15万台を敷地に捨てた。 山積みになった携帯電話の周りに従業員らを集め、その山に火をつけて、ブルドーザーで破壊するよう指示したという。 サムスン電子はその後、高品質の製品の設計に重点的に取り組むようになった。」

1995年当時は、日本企業の品質が世界を席巻していた時代で、韓国製品は「安かろう、悪かろう」とされており、実際に、製品も無理やり組み立てたり、不具合が解っていてもそのまま出荷していたりすることがあったようです。 この記事のように15万台の携帯電話を従業員の前で廃棄し、本当に「品質第一」を実践されたことが現在のサムスン電子の高品質に繋がっており、経営トップの考えがいかに重要かを示しています。

(PS 残念ながら私のスマホはiPhoneです。 いまだに1995年の残像が残っているようです)

それでは今回はここまで、次回はISO9000の認証を取得するにもかかわらず、品質不具合が減らない理由について考えてみます。

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